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2011年7月22日金曜日

景山民夫『東京ナイトクラブ』  甘くて、苦くて……いろいろなカクテルを飲んだ気分

【今日の一言】
誰に連絡すれば、いいんだろうか?

【今日のもう一言】
確かに『東京ナイトクラブ』でした。



景山民夫の才能に舌を巻いたのは、もう随分前のこと。
『虎口からの脱出』は、息を付く暇もなく一気に読んだ記憶があります。こんな暑い夏でも、暑さを忘れる面白さ。冒険小説とはこういうもんだ。
東京電力などの自分たちのことしか考えていない会社に、クーラーの電気代を支払って涼しくなるよりは、『虎口からの脱出』一冊のほうが、暑さ対策には効果的。

景山 民夫

あのころは、その他にも、景山民夫氏のエッセイを随分読みました。もう、本のタイトルは忘れましたが……。
今でも記憶に残っているのは、氏がまだ小学生か中学生の頃、通学時に一緒になる横顔がとても美しい女の子の話。これはオチが面白かった。
それからもう一つ、伊豆のトンネルの怪談話。これは本当に怖かった。どこで読んだか場所は覚えていないけど、読んでるうちに鳥肌が立ってきて、後ろを振り返って誰もいないことを確認しなければならないほど。本当にゾッとした。

景山民夫氏のエッセイは、虚実の狭間を抜い、ウソかと思えばホントなのか、ホントか思えばと思えばウソなのか、そのぎりぎりのところで表現してくるところです。
僕の父は桃が好きで、季節になればよく食べていましたが、皮をむかずに、そのまま食べていました。「どうして皮を食べるのか」と訊ねると、「皮と実の間が一番美味しいんだ」と教えてくれました。
皮と実の間に間に何があるんだろう、何も無いんじゃないか、と不思議な気持ちになりましたが、景山民夫のエッセイはまさに、それと同じで、ホントとウソの間が面白いのですね。

ちなみに、僕もこのブログでは、ホントとウソの狭間が描けるように心がけて入るのですが……。

さて、『東京ナイトクラブ』です。

なぜ今、景山民夫を読もうと思ったかというと、『東京ナイトクラブ』は短篇集なのですが、この短編集に『時そば』が収録されている、と知ったからです。

景山 民夫¥ 250

僕は、わけあって落語をやらなければいけなくなった話は、このブログでしましたが、演目をどうしようといろいろ悩んでいたら、あるところでウィキペディアで、景山民夫が時そばを現代ヴァージョンに書きなおしていて、その終わり方は衝撃的である、といったことが書いてありました。
「衝撃的」ですよ。これは読んでみないといけないでしょう。

Amazonで購入し、早速『時そば』から読み始めました。
衝撃的、という表現が適切かどうかは個人個人で違うでしょうが、確かに面白かったです。いや、かなり面白かったです。
普通に『時そば』をやるよりは、この現代版にしようかな、いや、そうしよう、と決心したのですが、文章の最後に
【無断上演を禁ず  筆者】と書いてあるではないですか。
景山民夫氏は既にお亡くなりになっています。
やってはいけないのでしょうか? 僕のような素人が、お金を取るわけじゃないんですから、いいですよね……。


(柳家喬太郎の『時そば』。面白いです)

本書のタイトル『東京ナイトクラブ』は、収録されている短編の一つのタイトルから取っているのですが、
『東京ナイトクラブ』全体は、よく書けているエッセイもあれば、もう少し違う感じの方がいいんじゃないかな、と思えるものもありました。
全部読み終わった後は、暑い夏の夜、いくつかの珍しいカクテルを試した後の気分でした。
あ、なるほど、そういう意味でも『東京ナイトクラブ』でしたね。

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